設計製図試験 PR

【二級建築士設計製図試験】過去に出題された設計課題を検証

 二級建築士製図試験の設計課題が来月7日に発表されます。
例年6月の初め頃に発表されますが、発表を楽しみで待ちわびる人と、どのような課題になるか気が気でない人、いろいろおられると思います。この記事では、そんな設計課題の過去を振り返ってみたいと思います。

 構造についてですが、二級建築士の設計製図試験では、主に木造課題と鉄筋コンクリート造課題(RC造)が出題されています。平成18年度以降は、3年に一度の割合でRC造となっていますが、必ずしもそのように決まっているという訳ではありません。

 その他、特殊な構造としては、鉄骨造(平成14年)、壁式鉄筋コンクリート造(平成13年)などがありました。

過去に出題された主な用途

 専用住宅(趣味室のある住宅など)
 二世帯住宅(三世代住宅)
 店舗併用住宅・〇〇を併設した住宅
 単体施設(保育所、記念館など)

木造課題

 階数については過去の出題全て2階建てです。そのうち3階建ての課題が出題される可能性はあるかもしれませんが、それがいつになるのかはわかりません。私個人的には、初めて3階建ての課題が出題される時は、事前にその告知があると思っています。
 もちろん、告知がない可能性もあるわけですが、もし告知がなかった場合、対応できない受験生が多ければ、多少減点が大きくなっても合格する受験生は出てくると思います。

令和4年「保育所」(木造)

 木造では初めての単体施設での課題でした。RC造課題だと単体施設は、コミュニティ施設や記念館、ペンションなどがあります。
 前年に引き続き、6月の発表では階数の掲載がありませんでした。可能性としては、平家建てや3階建てもありますが、実際は、概ねの想定通り2階建てでした。
 1階の部屋数が多かったので、プランをまとめるのに苦労した受験生が多かったです。
※保育所は、建築基準法の他に、児童福祉法の基準(保育室の面積や避難規定、耐火規定など)を順守する必要があります。ちなみに、保育所と幼稚園は、管轄する省が違います。幼稚園は文部科学省所管の学校教育施設であり、保育所は厚生労働省所管の児童福祉施設です。

敷地の東側が公園という設定だったのですが、公園に関する条件は特にありませんでした。公園に引っ張られると、プランは難航する可能性があるので注意が必要です。

令和2年 「シェアハウスを併設した高齢者夫婦の住まい」(木造2階建)

 要求室の数が多かったので、プランをまとめるのに苦労した人が多かった問題。
 住まい部分からLDK(B)に行き来ができるようにするという条件に対して、できていない人が多かったです。
※シェアハウスは基準法上は「寄宿舎」の分類になります。「住まい」ではありますが、住宅(専用住宅)ではありません。法の扱いも違ってきます。

令和元年「夫婦で営む建築設計事務所を併設した住宅」(木造2階建)

 既存樹木の存在がエスキースの難易度を高くした問題でした。平面形状が矩形にならず、L型などになった人が多かったです。

平面形状が矩形にならない場合の立面図も描けるようになっておこう!

平成29年「家族のライフステージの変化に対応できる三世代住宅」(木造2階建)

 将来は、要介護者の寝室として使用ができるようにする多目的室、車いす使用者用便所に改造することができる納戸、将来2室に分割して使用ができるようにする子ども室などの条件がありました。
※三世代ではありますが、子世帯に子どもがいる二世帯と家族構成は同じです。

平成28年「景勝地に建つ土間スペースのある週末住宅」(木造2階建)

 週末住宅という課題はこの年が初めて。
広い敷地の中に建設用地(計画する範囲)が設定された問題。記入が求められなかった門や塀、植栽を記入した人が多かったです。
※固定観念や先入観がぬぐい切れなかった問題と言えます。

平成26年「介護が必要な親(車椅子使用者)と同居する専用住宅」(木造2階建)

 想定通り、バリアフリーに関する条件が多かった問題。想定以外の特殊な条件(サプライズ)は、これと言ってありませんでしたので、受験生の解答レベルは全体的に高かったです。
 この年から、矩計図の代わりに部分詳細図の作図が求められました。部分詳細図は令和元年まで続きましたが、令和2年から以前の矩計図に戻っています。

平成25年「レストラン併用住宅」(木造2階建)

 プランニングの自由度を高くしますというセンターからの発表があった年。要求室の面積の縛りは減ったのですが、指定がないことが逆にプランニングが難しかったという受験生が多かったです。敷地が比較的狭かったことも、エスキースを難しくさせた要因の1つと言えます。

鉄筋コンクリート造課題

 RC造課題はこれまで平家建てから3階建てまであります。遵守すべき規定としては平家建てが一番緩く、3階建てが一番厳しいと言えます。3階建ては竪穴区画や非常用進入口などの規定があります。
※避難階が一番安全で、離れるほど、避難施設が必要になってきます。

令和3年「歯科診療所併用住宅」(RC造)

 この年初めて、階数の発表がされませんでした。翌年の令和4年度、そして5年度も発表されませんでしたので、今後も階数については発表しない方向でいく可能性が高そうです。
 ちなみに、本試験の問題は3階建てという条件でした。平成21年度に初めて3階建てが出題されてから、3階建ては4度目となります。
※平成21年度以降、2階建ては平成24年度の「多目的スペースのあるコミュニティ施設」のみ

平成30年「地域住民が交流できるカフェを併設する二世帯住宅」(RC造3階建)

 初めて、作図条件において延焼ラインの記入が求められました。正しく描けたはほとんどいなかったです。次のRC造課題(令和3年)でも同じ条件が出ましたが、この年は、多くの方が正しく描けていました。
※北海道胆振東部地震の影響で、北海道地域の試験は、約2か月遅れて11月4日に行われています。

平成27年「3階に住宅のある貸店舗(乳幼児用雑貨店)」(RC造3階建)

 店舗併用住宅ではなく、貸店舗という課題は初めて。
 共用コア部分という扱いに苦労した受験生が多かったです。
貸店舗と併用住宅との違いは、内部で住宅部分との行き来があるかどうか。

平成24年以前の設計課題

  • 平成24年度 「多目的スペースのあるコミュニティ施設」(RC造2階建)
  • 平成23年度 「趣味(自転車)室のある専用住宅」(木造2階建)
  • 平成22年度 「兄弟の二世帯と母が暮らす専用住宅」(木造2階建)
  • 平成21年度 「商店街に建つ陶芸教室のための工房のある店舗併用住宅」(RC造3階建)
  • 平成20年度 「高齢者の集う趣味(絵手紙)室のある二世帯住宅」(木造2階建)
  • 平成19年度 「住宅地に建つ喫茶店併用住宅」(木造2階建)
  • 平成18年度 「地域に開かれた絵本作家の記念館」(RC造2階建)
  • 平成17年度 「近隣に配慮した車庫付二世帯住宅」(木造2階建)
  • 平成16年度 「趣味室(フラワーアレンジメント)のある専用住宅」(木造2階建)
  • 平成15年度 「吹き抜けのある居間をもつ専用住宅」(木造2階建)
  • 平成15年度 「住宅地に建つ動物病院併用住宅」(RC造2階建)
  • 平成14年度 「商店街に建つコミュニティ施設」(鉄骨造2階建)
  • 平成14年度 「工房のある工芸品店併用住宅」(木造2階建)
  • 平成13年度 「ルーフガーデンのある親子二世帯住宅」(壁式RC造2階建)
  • 平成12年度 「高原に建つペンション」(RC造2階建)

    ※平成14年度と15年度は、地域によって違う課題となっています。

令和3年度から5年度は、階数の発表がされていません。

まとめ

 ということで、過去10年の製図試験をを簡単に振り返ってみました。構造だけで言いますと、平成18年以降、3年に1度、RC造課題となっています。この流れで行きますと、来年の令和6年はRC造課題となる可能性が高いと言えます。

 令和2年までは課題発表時に階数の指定があったのですが、令和3年以降はなくなっています。計画する建物の階数は本番にならないとわからないことになりますが、この傾向は今後も続くことになりそうです。

過去に出題された問題については、センターでも確認することができます。
https://www.jaeic.or.jp/



関連記事