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合格体験談によせて

合格体験談によせて

16期生K21110 よしさん T・Y

 

(自己紹介と2級建築士を目指したきっかけ)

私は現在、建築とは全く関係のない地方の小売店で管理職をしています。

今の会社に勤め始めたのが約19年前、それ以前は約9年プレハブメーカーの営業でした。

現在勤めている会社は経営の多角化を進め、介護事業を展開しております。その事業の一環で5年ほど前、とある資格を受講した際、建築の経験が介護業界でも生かせる事を知り、私の中で何かが目覚めました。

それから住宅改修に絡む別の資格を3年前に取得し、次は何を目指そうかと昨年の夏、資格本が並ぶ書店の本棚で何気なく手に取ったのが、神無先生の「2級建築士はじめの一歩」でした。

一読した後確信しました。前職を不本意なまま離れ、ずっともやもやしていたものが何だったのか、自分が目指したかった資格はこれだったのではないかと。更に自社の業務に生かせて、部下の助けにもなり、お客様のお役にも立てると。そんな折、会社から新規事業を立ち上げるにあたり、有資格者が在籍していた方いいのではないかという話になり、前職で実務経験のある私に頑張ってもらおうという事になり、業務命令も兼ね今回、約20年前の知識と経験はとっくに風化しているなか、実務経験だけを頼りに2級建築士を目指す事となりました。

 

(製図学習)

製図講座は後半戦から申し込み、学科試験から帰宅して、初めて課題の入った封筒を開封して中を確認し、翌日から製図試験に向けた学習を始めました。

テキストその1とその2にあった通り、最初の課題に取り組む前にテキストとエスキース・コードを何度も読み返し、いざ書き始めてみたのですが、初めての私には途方もなく時間がかかり、途中何度もテキストとエスキース・コードを行ったり来たりで、最初の1枚目は結局仕上げるのに10時間以上かかりました。

製図とはこんなに難しく、大変なものなのかと壁に跳ね返された気持ちになり「これを5時間で完成させるなんて、自分には無理だ。もう添削以前の話だ」と折れた心で課題を送り、「このレベルで合格は到底無理ぐらいの事が書かれてくるに違いない」と覚悟をして待ちました。返ってきた添削図面を見ると「思ったより赤くない…」が第1印象でした。しかも神無先生の背中をグイっと後追ししてくれるような力強い言葉があちこちに…。やられました。すっかりその気になってしまいました。「こんな自分でも、もしかしたらいけるかもしれない」と思った瞬間でした。人間って幾つになっても褒められるとやはり嬉しいものですね。「絶対に合格する」という気持ちがより一層私の中で強くなり、又確固たる揺ぎ無い決意になりました。

それからは昼夜を問わず製図に没頭しました。昼間は仕事の空き時間に課題のエスキース、時にはパソコンの行と列を真四角にして方眼紙に見立て、プランニングしてみたり。(社長、ごめん…)夜帰宅してからは毎日2時間、休日は5時間ほど課題と復習を繰り返す日々。

取り組んでみると、エスキースにそれほど苦手意識は感じませんでした。むしろパーツを組み合わせていく感覚が楽しくさえ思えました。その反面、作図時間が遅いのが一番大きな課題として見えてきました。

対策として行ったのが、毎回作図前に必ずトレーニングその1~3に取り組む事でした。どんなに時間の取れない日でもこのトレーニングだけは製図試験当日、家を出る前まで怠る事はありませんでした。最後の方ではトレーニングその3の立面図の横に断面図も書いて、添削で指摘の多かった帳壁の包絡とパラペットとバルコニーの手摺の整合性の練習をしてました。全ての課題に真剣に取り組み、返ってきた図面は必ず復習を兼ねてどの課題も3回は書きました。作図時間は課題ごとに順調に短縮されていきましたが、自分の中では未だスタイルを確立できず、特別練習問題の添削も申し込み、全てやり切ったつもりですが、本番で時間内に書き上げ、チェック時間が確保できるのかという不安は最後まで解消できず、製図試験当日を迎えます。

 

(製図試験当日)

(エスキース)

課題に高低差が出た今年のサプライズに動揺が走りました。裏返しの問題用紙から透けて見えた瞬間の衝撃は今でも鮮明に蘇ってきます。ですが悩んでも仕方が無いので、できるだけ普段通りで行こうと腹をくくりました。

設計課題を読み始めた9行目、再び衝撃が襲ってきました。「~盛土・切土により敷地全体を平坦にしてはならない」の一文です。この時一瞬「建物を北と西に目一杯寄せて、壁と隣の間をそこだけ残せばいいんじゃないか」と思いましたが、「待て待て、敷地内勾配を逆に利用した計画にすれば何とかなるんじゃないか」と思い直し、とりあえずエスキースに入りました。

 

(ここから心の声です)

「第2課題に似ているな」「部屋数が少ない。思いの外、エスキース自体は難しくない」

「診察ブース2ヶ所は練習問題にあったな」

「柱スパンは5m×5m×4mで良さそうだ」

「東西は7mでいけば、1m+7m+3mで敷地内通路も確保できるな」

「いつも通り東側に通路で北隅に階段、EVと玄関のパターンでいける」

「防火戸は1階外開き、2,3階は内開きとEV、防火区画はいらない」

「延焼ラインは東西南北でこのプランなら南は関係ない」「窓はほとんど防火だな」

「切断線は西寄りで切った方が良さそうだ」「部分詳細図は1,2階両方に切断線か」

「住宅の駐輪スペースは一番奥だな」「通路が長いので植栽用の花壇でも書いておくか」

「バルコニーの出幅は2m迄」「広い書斎になりそうだ」

「駐車場、入口、駐輪場の配置で動線の交差を避けるパターンだな」

 

等と考えながら30分ほど時間をかけ基本プラン図を完成させ、ブラッシュアップ。

面積計算で建築面積もOK、計画の要点①②は掲示板の皆さんのパターンのおかげでバッチリ。③も敷地内勾配利用を書けば良さそうなので60分経過を目途に作図に入る。12:00エスキース終了。

だが、まだこの時私は、最後にとんでもない事になる事に気が付いていない。

 

(平面図)

いつも通りに作図を進める。とりあえず一通り書き上げ、課題とチェック。

「あれ、倉庫が無い、どうする」

「消毒スペースの横に作れ、スタッフスペースが理想だが無いよりまし」

「危ない、延焼ライン東側忘れてる」「室名書く前に忘れそうな丸防を書いておくか」

「部分詳細図の切断線も2ヶ所忘れそうなので先に書くか」「断面図の切断線は問題なし」

 

等のやり取りを頭の中で繰り返し、何とか平面図終了。この時点で14:15を過ぎている。思いの外時間がかかった。懸念していた作図の遅さが出てしまった。しかも床高と敷地内勾配角度は未だ未設定のまま。補助線も消してないが後回し。あと1時間45分。いけるか。

 

(断面図)

今回の試験の最大の難関で山場、こいつをどう処理するかで全てが決まる。いやらしいくらいGLラインが目に付く。非常に目障り。道路境界線から5m引っ込めていつも通りの作図を始めようとして手が止まった。

「それにしても厄介なこの勾配、どうやって処理する」

「床高を決めないと地中梁が書けない」

「室内に段差ができるがどうする」

「室内段差で天井高は?柱のあるところで設けたら奥の床高は?天井2.1mとれるのか?」

「そもそも段差なんか書いた事無いし、段差のある地中梁をどうやって書けばいい?」

考えていても仕方がない。時間が無い。ここからが現場対応力、最善の手を尽くすのみ。

 

「待合スペースの天井高はそれでも2.5m取りたい」

「床高は+150㎜で、柱で150㎜ずつ上げよう、一番奥は+450㎜」

「天井高は150㎜ずつ下げだから、2.35mと2.2mでギリギリ」

「いつもより1、2階は100㎜下げた建物にして、高さを抑える」

「2900+2800+2800で8500、パラペット700で9200、これならどこでGLとっても10mは超えない」

「地中梁はやった事無いが、階段状にして納めてみるか」

「2、3階はいつも通りでいけるので、1階次第、とにかく1階を仕上げる」

 

後はひたすら書き上げるのみ。指摘された帳壁の包絡処理、バルコニーの手摺、パラペットも大丈夫。後は室名と寸法線を入れて断面図完成。平面図に戻り、床高と敷地内勾配角度を1/40の自然勾配にして記入。時間は現在15:20。まずくないか。っていうかやばいぞ。

 

(立面図)

残った時間はあと40分。断面図に合わせ、ひたすら書く。南側立面図で助かった。作図量が少なくて済む。そう思いながら致命的なミスを犯す。時間の無い切羽詰まった状況にも関わらず、なんと窓を単線で仕上げる事なく、ご丁寧にいつも通り窓枠まで書き上げてしまった。今の状況は印象云々どころではないのに。思わず笑った。習慣とは恐ろしいものだとつくづく実感。時間は現在15:35を過ぎている。ほんと完璧にやばい。

 

(部分詳細図)

「支障のない程度であれば作図上の省略は、行ってもよいものとする」この文が天の助けとこれでもかと省略。まともに書いたのは2階の梁くらいのものだ。それでも400×700すらもどかしく感じる。バルコニー手摺、バルコニーの出幅、開口部の窓と省略できるものは全て省略し、あとはひたすら外壁、内壁、天井を仕上げる。とにかく何が何でもひたすら完図を目指す。とここで神降臨。

「バルコニーの1階天井側に断熱材を入れなければ、外気が当たり寒いはず」

これは第3課題添削時に指摘された事の逆。

「1階天井に断熱材は不要ですよ。」の滴先生の赤ペンコメント。

まさかここで思い出すとは。

仕上材をすべて書き上げ、時計を見ると5分前の15:55。もう補助線を消す時間も、チェックする時間もない。だが何とか完図させ安堵している自分がいる。製図版を止めていたテープを剥がし試験終了かと思ったその瞬間、とんでもない事をやらかしている事に気づく。「面積表と計画の要点を書いてない」

 

(面積表・計画の要点)

下書きが終わった時になぜ解答用紙に転記しておかなかったと自分を責める。4時間前の余裕をこいていた自分に腹を立てるも、泣いても笑っても残り時間5分。できるだけきれいな文字で丁寧に書き、印象良くなんて言ってられない。とにかく書くしかない。恐らく今世紀最大の殴り書き。計画の要点③は下書きと全く違う事を書いてしまったがもう直せない。とにかく埋めた。1分前の15:59すべてが終わった。本当に終わった。燃え尽きた。

 

(終わりに)

余りの激闘だった為、再現図もしばらく書けず、気力を振り絞りようやく送ったものの、全く受かっている気がせず、神無先生からよくできていますとコメントをいただいても申し訳ありませんが、信じられませんでした。抜け殻のような日々を送るうち、いつしか試験の記憶も薄れていきました。なので発表の日番号があった時は職場でひっくり返りました。

この講座では私は、どちらかと言えば積極的に掲示板を活用する方ではなく、見ているだけでしたが同期の皆の頑張りとやり取りに何度励まされた事か。良い仲間に恵まれ、できれば全員で合格したかったというのが今の気持ちです。自分だけ申し訳ないような気がしてなりませんが、せめて全力で戦ったおっさんがいた事、そんなおっさんでも合格できる事、そして、絶対に最後まであきらめなければ結果がついてくる事をお伝えしたくて今回筆を執りました。お役に立てれば幸いです。努力した時間は絶対に裏切りません。

私は、「今、目の前で起こっている事は後に繋がる必然」と常日頃部下たちに説いています。たとえ今は苦しく、悔しく、つらく悲しくても、その経験は必ずこれから訪れる良い結果に結びついています。だからなりたい自分がいる未来の為に、皆今を頑張れと言ってあげたいです。

20年前の実務経験のみで挑戦した今回、自分でも結果に驚いています。「50の手習い」と文句を言いながらも支えてくれた奥さんに感謝。そして神無先生をはじめ先生方には、本当にお世話になり、感謝の言葉もありません。

試験中に何回もふとした拍子に頭をよぎり、何度となく繰り返し訪れる怒涛のようなピンチを、風穴を開け突破に導いてくれたのは間違いなく、先生方のあの「赤ペン」でした。私にとっての最大の武器は、今思えば「赤い添削図面」だったのかもしれません。

2ヶ月という短期間で私を合格レベルまで引き上げてくれたこの講座は、本当にエッジが効いていました。そして頑張っている人を応援するというコンセプトに非常に共感できました。だから私はここを選んだのだと思います。最端製図の製図講座を受講していなければ絶対に受かっていませんでした。合格できたのは先生方の指導があったからこそと本当に感謝申し上げます。

これからの皆様のご健康とご多幸をお祈りしております。ありがとうございました。
長文失礼しました。

 

2021年12月

16期生K21110 よしさん