「挫折からの合格」 K・M
■初めに
私が二級建築士を受験しようと思ったきっかけは、建築士の勉強を通じて建築関係で働く人間として幅広い知識を蓄えたいと考えたものの
一級の受験資格がなく、何もないよりは二級でもあれば役に立つだろうという考えからでした。
仕事上は必要が無いため、莫大な費用が掛かる資格学校に行くのはもったいないなと思っておりました。
■一次試験通過と、最端製図申し込み
平成27年度に市販の参考書で勉強したうえで一次を勉強し、自己採点の結果4科目の合計は60点を上回っていたものの施工で1点足りず、
また来年受験しようと気持ちを切り替えて過ごしていたのですが、結果の通知は不合格の知らせではなく二次試験の案内でした。
図面を引いたこともない状態で試験一週間前から対策を始めてもさすがに間に合わないだろうと思い、二次の受験は見送りました。
そして年が明け、そろそろ二次試験の準備をしなければと考えていたのですが、独学のための資料が中々見つからずに
どう勉強すればよいのだろうと悩んでいたところ、知り合いから最端製図というものがあると教えてもらいました。
サイトを見ると通信ではあるものの一人で勉強できるツールが揃っており、また前半戦・後半戦合わせても予備校と比べ物にならないほど
良心的な価格で、合格実績もたくさんあることから申し込みました。
■最端製図前半戦講座
2月中旬に前半戦講座が到着し、まずは練習課題をトレースするところからスタートしました。とにかく時間がかかり、
仕事後等、時間を見つけながら一週間かけてようやく完成したと記憶しております。
続いて第一課題。こちらも2日かけても終わらず、見直す気力もなく課題提出。戻ってきた図面は赤だらけだったものの、
製図の大変さに早くも心が折れて復習する気は起きず、その後の課題も放り投げてしまい、最終的に前半戦講座で提出した課題は一つだけでした。
おまけに、試験の申込スケジュールも忘れかけており、ネット申し込みの締め切りが過ぎてしまった後に直接建築士会に持ち込み
何とか申し込むことが出来たほど、受験に対するモチベーションは低くなっておりました。
■最端製図後半戦講座申し込み
そして何も手を付けていないまま時間は経っていきますが、こんな怠惰な生徒であるにも関わらず
神無先生は4月中旬に後半戦講座の申し込み案内をくださいました。
前半戦ほぼ手付かずでしたので、いっそこのまま全て諦めてしまおうか迷いましたが、
今年学科を通過した方はこれから勉強するのだからまだ間に合う、ここからがスタートラインだと自分に言い聞かせ、後半戦の講座を申し込みました。
ただ、申し込んだは良いものの、早くも図面を引くことの大変さに心が折れた私にはなかなかやる気が起きず、
すでに手元にある前半戦講座に手を付けることもなく気づけば6月も終わりに近づいていました。
■最端製図後半戦講座開始
7月初旬頃筆記試験を終えた生徒が製図の対策をし始めるタイミングになり、後半戦に差し掛かりました。
今からやれば後半戦は最端製図で示されているスケジュール通り取り組むことが出来る。ようやく取り掛かろうという気になり
初心に帰り練習課題に取り組みました。
後半戦第一課題が届くまでは、エスキスができなければ全てうまくいかないと考え、最端製図の目標である一時間でプランニングを目指すべく、
手を付けなかった前半戦講座の課題を使ってエスキスの練習に取り組みました。
そして後半戦第一課題が届き、エスキスは自分の力だけで行なおうと何も見ずに取組み、
平面図については過去の解答を参考にしながら3~4時間かかって完成しかけたところで、要求室を一室見落としていることに気が付きました。
これだけ頑張って書いたのに失格かとまたしても心が折れかけましたが、
本番じゃなくてよかったと捉えるとともに要求室の欠落を避けるためのチェック方法を考えた上、翌日改めて書き直し、
図面はひとまず過去の課題の解答を見ながら結局4時間以上時間をオーバーしながらなんとか書ききって提出しました。
戻ってきた課題は要求図書の見落としや書き忘れだらけで真っ赤っかでしたが、エスキスの練習の成果が早くも出たのか
プランニングについては誉めていただくことが出来ました。また、この課題の失敗を受けて要求室のチェック方法を見直しました。
後半戦第二課題に取り組むまでの間は、ひとまず立面図・断面図の書き方を覚えるため、エスキースコードや最端製図に公開されている練習問題を取組みました。
後半戦第三課題も時間をオーバーし、部分詳細図も何かを見ないと書けない状況で、改めてこの二つの克服が合格に向けた大きな課題だと感じました。
そこで、製図のスピードアップと書けない図面を覚えるために、次の事に取り組むことにしました。
1.耐力壁や敷地・建物への出入り口の△や屋根伏図の小屋束の○など、これまでテンプレートを使って書いていた細かい図形を全てフリーハンドで書く。
2.平面図、立面図、断面図、2階床伏図兼1階小屋伏図、部分詳細図のそれぞれを、
目標時間を決めて過去の課題やエスキースコード等で紹介されている図面をひたすらトレースし続ける。
その結果、第4課題は5分オーバーまで時間を短縮することが出来ました。
ただ、まだ見直し時間を確保できず、部分詳細図も自信をもって書けない状態であり、
シンクロ模試まで引き続き製図のスピードアップと部分詳細図を覚えるための練習を続けました。
そして迎えたシンクロ模試。思うようにエスキスがハマり、これまでは製図の段階での設計変更がよくあったのですがそれもないまま図面を書ききり、
見直しの時間を20分以上取ることができ、手ごたえ十分でポストに投函しました。
帰ってきた結果は記述の減点だけの98点で、掲示板でもよくできているプランとして紹介いただけ、最高に近い出来となりました。
ただ、ようやくまともに図面を完成させられるところまで到達したばかりで、たまたまエスキスがハマって上手くいっただけなのではないか、
もし本番でエスキスが上手くいかなかったらどうなるのだろうと逆に不安を感じ、改めてこれまでの課題を使ってエスキスの練習に取り組むとともに、
更なる製図スピードの向上のために各図面のトレースもひたすら続けることにしました。
その後、追加の課題が3つほど出されたのですが、そのひとつ目を終えて面積表を記入しているところで、まさかの面積オーバー。
製図の途中でプランを変更したら発生してしまったもので、本番じゃなくてよかったと思うとともに、
改めてエスキス中、製図前、製図の際の設計変更前と面積を念入りにチェックする癖をつけました。
おかげで、残りの二つの課題では、自己採点のところ減点の低いものを書けていたと思います。
■試験当日
一級建築士を最近取得した先輩から、試験当日資格学校の生徒はみんなで貸し切りバスに乗って開場前に到着するよう向かうので、
同じくらいにつかないと気負いするかもしれないから早めに行った方が良いと言われ、早めに会場入りしました。
開場後は部屋に入って製図板の設置ですが、今までずっと自宅で勉強していたので、その狭さに製図板をどう置くのが良いのか少し悩みましたが、
資格学校の人が会場付近で配っていた傾斜板が非常に便利で、しっくりくる置き方が出来ました。
そして、長い時間中にエネルギー切れにならぬよう、チョコレートを食べ、あとは要点の確認と線を引く練習をして気を紛らわしながら、
試験開始の瞬間を待ちました。
遂に試験開始。これまでにない緊張感がこみ上げてきましたが、とにかく落ち着いて取り組むことを心掛け、
ベストではないものの要求された条件は満たすプランが一時間という決めた時間の中でしっかり出来上がり、製図に入りました。
緊張のあまり手元が狂い、最初は壁の幅が中々安定して書けず、度々深呼吸をして落ち着かせました。
部分詳細図を書くところで、最初の壁にぶつかりました。練習ではこれまで壁を挟んで左が室外、右が室内となるように部分詳細図を書いてきました。
また、平面図における切断方向について、東西に切るときは北側に、南北に切るときは西側に矢印を書くと学んだような気がします。
ただ、私のプランでは部分詳細図の要求室は北東側にあり、練習通りの詳細図にしようとすると切断方向が逆になり、
切断方向を守ろうとすると詳細図が反転してしまいます。どちらを優先しようか迷いましたが、
部分詳細図において室外は左、室内は右と学んだ覚えはなかったので、切断方向を守る方向で書くことにしました。
次にぶつかった壁は断面図。吹き抜け部分を含む断面図を書きなさいとあったのですが、そのような断面図を書いたことが無く、
吹き抜けに面する2階部分には腰壁を設けたほうが良いのか、それとも手すりの書き方があるのだろうか、
更には何も書かない方が良いのか、正解がわからず迷いました。ただ、普段の勉強でも「わからないからやらない」ではなく、
「わからないならわからないなりに表現をする」という事を神無先生は教えてくださいましたので、
手すりを設けて下を眺めることが出来るようにするのがベターではないかと考え、H1400のサイズで線を一本引き、手すりと表現しておきました。
後から考えても、この時の私にとってはベストの選択だったと思っています。
その後は順調に製図を進めることができ、試験終了まで20分の時間を残し見直しへ。問題用紙を隅々まで眺めながら一つ一つチェックを付けていく中で、
2階床伏図兼1階小屋伏図の火打梁を書き忘れていることが判明。一瞬ぞっとしましたが、見直しの大切さを実感するとともに落ち着いて書き足し、
問題文の右下までチェックをし終わるころには漏れがないことを確認出来ました。
無事、試験は終了しましたが、色々と想定外の事もあったものの全てある程度の対処はでき、やり切った気持でいましたので、
正直この時は絶対に合格しただろうと確信していました。
■試験後
試験後、最端製図のみんなはどうだっただろうかと気になって掲示板を覗いてみました。
すると、今回の課題においては大きなミスなのかもしれないという事に気付いてしまいました。
これまでの全ての課題においては、与えられた敷地を自由に使って設計するというものでしたが、本番では、敷地の中に建設用地があり、
その中に計画するというものでした。当然、建設用地の中に建物等の計画を行ないました。ただ、私は問題文の要求と関係なしに必ず塀を設け、
時間があればコンクリートブロック塀H1400と記入していたのですが、今回は敷地の中に建設用地があるため、塀は必要ありません。
おまけに、景勝地における敷地ですので、求められていないのに設けてしまってはただの邪魔です。
コンクリートブロック塀と書いたかは覚えていないのですが、確実に塀は書いたし、
時間が余っていたからひょっとすると塀である旨も記入してしまったかもしれない。
これ以外にも把握していないミスがひょっとしたらあるかもしれないし、ここで大幅な減点を食らったら不合格なのではないか。
結果発表までは、不安の日々でした。
しかし、合格発表当日、自分の番号は掲示されており、まだ信じられない思いで帰宅すると、無事合格の通知が届いており、
私の受験生活は無事幕を閉じることとなりました。
■最端製図で良かったと思う事
予備校ではなく最端製図で本当に良かったというところは、スケジュールの目安は示されているものの自分のペースで取り組むことが出来るというところです。
今週末は予定が詰まっているから平日で時間を見つけて取り組もう、
今回の提出期日では出せそうもないから少し遅れて出そうという事が出来ることは非常に助かりました。
また、私は前半戦で早くも挫折を味わいましたが、これがもし集団で授業を受けるタイプの資格学校であったら挫折して中断しているうちに
授業は進み置いていかれ、再起不能の状態になったと思います。
試験前々日、一人で定食屋に入ったら相席になった2人組が話の内容的に奇遇にも大手資格学校の生徒だったのですが、
「ここ半年ぐらい休日ずっと予備校に缶詰状態だったから、試験後の休日の過ごし方が分からない」と話していました。
私は2週間前くらいまでは割と週末は飲みに遊びに行ってましたのでその時はすごく不安になりましたが、結果合格しました。
非常に効率良く勉強させていただき、こんな私を合格に導いてくれた最端製図には感謝の気持ちで一杯です。
因みに、もし私の合格体験記を読んで「なんだ、後半戦だけ申し込めばいいじゃん。
学科受かって時間あるけど前半戦は申し込まなくていいや。」と思った、学科を通過した2,3年目のあなたへ。
たくさんの引き出しを求められるこの試験においては学科上がりの生徒に対するアドバンテージがあった方が絶対にいいと思いますし、
私と似た性格の方の場合はただ挫折の時期が後半戦途中に移動して受験を諦める結果になるだけですので、絶対に前半戦から開始してください。